飽くなき好奇心ー真鍋淑郎博士ノーベル物理学賞受賞!
米プリンストン大学の真鍋淑郎博士が今年(2021年)のノーベル物理学賞を受賞されました。
真鍋先生は1931年、愛媛県のお生まれです。スウェーデン王立科学アカデミーの報道発表によれば、今回の受賞理由は「地球の気候を物理的にモデル化し、変動性を定量化し、地球温暖化を高い信頼性で予測した」というもので、真鍋先生は「大気中の二酸化炭素量の増加が地表の温度上昇につながることを示した」とのことです。
関連ウェブサイト:Press release: The Nobel Prize in Physics 2021
「変動性」とは「いろいろ変わること」、「定量化」というのは「数値で表すこと」、「高い信頼性」とは「誤差が少ない」ということです。
真鍋先生は、気象現象を数値化して、どのような式に当てはめたら、コンピュータで気象を忠実に再現できるかを1960年代から研究されたようです。
1965年の論文から察するに、例えば、平均気温について、コンピュータで計算した値と実際に計測された値を比べて、式の妥当性を検証するという作業を繰り返されたのだと思います。
参考論文:[15200493 – Monthly Weather Review] SIMULATED CLIMATOLOGY OF A GENERAL CIRCULATION MODEL WITH A HYDROLOGIC CYCLE.pdf
今でこそ、二酸化炭素の排出が地球温暖化につながることは「常識」になっていますが、なぜ地球の気温が上昇しているのか、その原因を探ることは、それこそ雲をつかむようです。
真鍋先生が気象現象をコンピュータで計算できるように数式で表現して、かつ、二酸化炭素が地球温暖化の要因だということを示したというのは、まさに神業です。
プリンストン大学の記者会見で真鍋先生を紹介した Tom Delworth さん(地球流体力学研究所、プリンストン大学 大気・海洋科学部)が、コンピュータで気候をシュミレーションするという現在の気象学の手法を確立したのは真鍋先生である、とおっしゃっていました。
関連動画:News Conference for 2021 Nobel Prize in Physics: Syukuro Manabe – YouTube
関連ウェブサイト:Princeton’s Syukuro Manabe receives Nobel Prize in physics
ブログのタイトル「飽くなき好奇心」は英語では insatiable curiosity です。Delworth さんが真鍋先生を評して使われた言葉です。
真鍋先生は記者会見で「好奇心から行う研究(curiosity-driven research)」の重要性を何度も強調されていて、その好奇心は今なお尽きないご様子でした。
ノーベル物理学賞受賞、おめでとうございます!
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