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『人間のトリセツ: 人工知能への手紙』を読んで

『人間のトリセツ: 人工知能への手紙』を読んで

昨日(2020年2月5日)、黒川伊保子(くろかわ・いほこ)さんの『人間のトリセツ: 人工知能への手紙』を読みました。

わたしにとってはオモシロイ部分が多々ありました。一例を挙げると、「女性は、相手の会話文から、単語をいくつか切り出したら、あとは、自分が保持している認識パターンに当てはめて、一気に解釈してしまう」(p.64)という文です。

この文の意味は、「女性は、話しているときに、キーワードを聞いただけで、勘を働かせて、相手の言いたいことを瞬時に理解する」ということです。もう少し言い方を変えると、「相手の話を全部聞かなくても言いたいことをすぐに理解できる」ということです。

ちなみに、女性に限らず男性も多少は同じことを行っています…恐らく(笑)。つまり、「単語をいくつか切り出したら、あとは、自分が保持している認識パターンに当てはめて、一気に解釈してしまう」(p.64)わけです。

さて、うめじ英語塾のブログなので、英語の理解の観点から、関連する3つのポイントを挙げたいと思います。

まず、一気に解釈するためには、自分が保持している認識パターン、つまり、「これはこういう話じゃないか」という常識が不可欠です。「自分が保持している認識パターン」が多様であれば、簡単に言えば、物知りだったら、英文の内容は細部まで聴いたり読んだりしなくても解釈できます。例えば、今だったら新型コロナウイルスの感染拡大が報道で毎日取り上げられていますので、 coronavirus, quarantine, travel ban といったキーワードさえ分かれば、「一を聞いて十を知る」状態に達することができます。

逆に、「自分が保持している認識パターン」が乏しい場合、理解できなかったり、勘違いしたりします。つい先日、村上春樹さんについて書かれた英文について生徒様から質問を受けたのですが、実は、ちょっと苦労しました。村上春樹さんの小説に鳥や一角獣が出てくるらしいのですが、わたしは村上春樹さんの本を1冊も読んだことがないので、アタマのなかに予備知識が全くありません。英文は読めるのですが、何のことかさっぱり分からないという苦い気持ちを味わいました。まさに「これってどういうこと?」です。

最後に、英文の内容が「自分が保持している認識パターン」に当てはまらない場合は、単語や文法の知識を総動員して、意味の組立をする必要があります。特に、大学入試の英文を読む際には、内容が受験生の常識の範囲を少し超えたり、文構造がやや複雑だったりして、イチイチ読む必要があります。

というか、大学入試問題は英語力を試す問題なので、聴いたり読んだりしなくても理解できる内容は意図的に除外してあります。例えば、「リトグリ」について書いてある英文を問題にしたら、知っている人と知らない人の間で不公平が生じますし、知っている人なら英文を読まなくても解答できるので英語力の試験になりません。

そんなわけで、大学入試対策としては、受験生は日頃から幅広い話題について関心をもって常識の守備範囲を拡大するとともに、単語や文法の知識を駆使しながら縺(もつ)れた英文を解(ほど)くような練習も必要です。ホント、一筋縄では行きません…(笑)。

話題を『人間のトリセツ: 人工知能への手紙』に引き戻すと、著者の黒川さんは人間の感性を数値化する研究もされており、将来、人工知能と人間との会話がスムーズに行われるのに欠かせないヒケツについてもこの本には書いてありました。もちろん、人間のわたしにも大いに参考になります。黒川さんの他の著書も読んでみようと思っているところです。